〜アユの越年飼育〜

 

アユは本来一年魚で、秋口から冬にかけて産卵した後、斃死して寿命を全うします。しかし中には越年アユと言って次の年まで生き残る個体がいます。天然の越年アユは大部分が雌で、産卵後に偶然体力を回復したり生まれが遅くて産卵に参加できずに越冬するケースが多いようです。また、水温を上げたり飼育時の光照射時間を長くすることで生殖巣の発育を抑えて(電照抑制)越年させることが可能で、養殖物の越年アユがこの方法を用いています。電照抑制の開発と冷凍技術の発達により、今では1年中アユが手に入るようになりました。

室内飼育下についても電照抑制が可能です。生殖巣の発育に最も影響するのは光及び水温と考えられます。そこで、以下の飼育環境におき、越年飼育を試みました。

・水槽を1日16時間以上蛍光灯で照射します。但し、水槽に付属している蛍光灯だと逆に魚にとってストレスとなるため、部屋の照明を点灯させます。照射は生殖巣が発達し始める8月上旬から実施します。照度は水面上で50ルクス程度あれば十分(通常の室内散光下で300〜500ルクス)なので、白熱球で60W程度の明るさがあればOKです。

水温をヒーターを使って20℃〜25℃に保ちます。秋から冬にかけての水温低下も生殖巣の成熟要因になります。

冬季の飼育で特に気をつけることは水換え時の水温変化です。汲みたての新しい水は水温が低いので暖房の効いた部屋に十分置き、水槽の温度に近づいたことを確認してから換えてやります。

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電照抑制+ヒーター制御で飼育しているアユ(2003年2月、2匹とも♂)


 

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2月下旬。婚姻色を呈した個体。上側の個体は3月初めに★となりました。

 

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桜と鮎。合成写真ではありません。仲間が天寿を全うしていく中、ただ一匹越冬した個体です。2月下旬には真っ黒に錆び、餌もとらずに随分弱って見えたのですが再びもとの鮮やかな銀白色に戻って餌を食べ出しました。ガリガリにやせてしまった身体も少しずつ回復しています。マリネにでもするつもりで釣ってきた魚を何気なく水槽に入れたのが1年前のGW。短命で神経質なアユは水槽に入れても長生きしないと思っていました。この個体はその後6月半ばまで生存しました。飼育開始から405日、推定1歳8ヵ月。♂であることを考えても十分長生きしてくれました。

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