アユを飼う

ayu5.jpg (13950 バイト)

「清流の女王」といわれる鮎。しかし、釣りをしない人はその姿のほとんどを塩焼きや甘露煮でしか拝めない(笑)。
その生きて泳ぐ姿を果たして自宅の水槽で再現できるか?

1.鮎は水槽で飼えるのか? 5.餌付けは? 〜観察してみよう〜
2.飼育に必要なものは? 6.水替えは?
3.魚の調達方法 7.どれくらい生きるの?
4.水槽への導入 8.病気は?

1.鮎は水槽で飼えるのか?

日本産淡水魚のアクアリストは数多くいます。ヤマメやイワナなど渓流魚専門の愛好家も多く、Web上でも詳しい飼育方法が紹介されてます。しかしアユが水槽で観賞用として長期飼育された例は少なく、日本産淡水魚専門の飼育書でも詳しく述べられていません。神経質なアユは養殖池ならともかく、狭い水槽での飼育は難しいと言われています。アユを水槽で長期間飼うにはちょっとしたコツがあります。ここでは私が近所の貯水池で釣ってきた鮎を飼育した事例を紹介します。

sabiki.jpg (17864 バイト)

稚鮎のサビキ釣り

 

2.飼育に必要なものは?

水槽 水温・水質を安定させるために最低60 cmは必要と思います。10 cmくらいの鮎なら60 cm水槽で1〜3匹、90 cm水槽で3〜5匹といったところでしょうか?
ろ過装置 上面式、底面式いずれでもOKです。ろ過能力は大きめの方が良いでしょう。
エアポンプ 酸素不足に弱いので、ろ過装置のほかにエアポンプは必要です。
水槽用クーラー 夏場の水温が25℃を超えると飼育が難しくなるため、あった方が良いです。但し高価なので部屋のエアコンで下げるか、それも難しければペットボトルに水を入れて凍らせたものを水槽に浮かべるという手もあります。
水槽用ヒーター 越年させる場合は必要となります。
金魚や熱帯魚の餌で代用できます。浮上性のものより沈降性の餌が適しています。養殖用のアユ餌(ペレット)もありますが、小分けして売ってはいないようです。
蛍光灯 越年させる場合に水槽用の蛍光灯以外に必要となります。
水温計 水温管理に使います。特に安いクーラーやヒーターを使用している場合は装置の温度目盛は当てにならないので、必要となってきます。
水流ポンプ 必ずしも必要ではありませんが、アユは遊泳力が強いため、運動不足を補う意味でもあった方が良いでしょう。
PSB 培養した光合成細菌。これも必ず必要なものではありませんが、水槽のセットアップ時に生物ろ過を早く立ち上げたいときに便利です。

 

suisou.jpg (13929 バイト)

アユ水槽(60cm)

 

3.魚の調達方法

釣りやガサガサで捕獲します。養魚場などで分けてくれたり、まれにペットショップで出回ることもあるようです。
経験上、食性が植物性へと移行する10cm未満のもので、琵琶湖等に棲む陸封型の個体が比較的丈夫で飼育環境への適応が早いです。
但し、アユは重要な水産資源ですので、時期・場所により捕獲禁止となっている場合があるのでご注意下さい。

4.水槽への導入

水はカルキを抜いた水道水でOKです。採取場所の水を混ぜた方が良いと思われがちですが、混ぜなくとも飼えます。
ただ、採取場所の水をビニール袋に入れ、その中に魚を入れて水温合わせはした方が良いです。適水温は20〜25℃、変動幅を小さくすると長生きします。
導入後、生物学的ろ過が完成するまで市販の光合成細菌を添加します。鮎は光に敏感なので、導入後数日は薄暗いところで水槽の環境に慣れさせます。また、水槽に慣れた後も2面、できれば3面は覆った方が魚が落ち着くようです。

5.餌付けは?

稚魚や若魚(〜5月くらいまで)であればそれほど難しくありません。金魚や熱帯魚の餌(沈降性のもの)を根気よく与え続けると、1〜2週間で食べるようになります。食べ始めるまでは残った餌はこまめにすくいとり、水を汚さないように気をつけます。
餌付けが成功すると、とにかく何でも食いまくります。私が飼っていた個体は餌がなくなると、エアポンプのチューブやろ過パイプについた汚れ(苔?)をついばみ、綺麗に平らげてしまいました。
餌の適量は1日2回、5〜10分くらいで食べ切る程度です。あまり与えすぎると、大きくなって水槽が狭くなりますので、大きい水槽が無い場合は餌のやりすぎに注意しましょう。
また、川から苔のついた石を拾ってきて入れればよいと言いますが、病原体なども一緒に持ちこむことを考えると私は勧められません。餌付けしてしまえば成魚であっても配合試料で飼う事は可能です。

5月以降に友釣りで釣れたものや川に棲む個体は既に珪藻類が主食となっているため、餌付けを含む飼育環境への適応が難しいようです。

6.水替えは?

1週〜2週に一回、三分の一ずつ交換します。水換え時は一緒に底に沈殿しているゴミやふんも片付けるようにしましょう。鮎は底に沈んだ餌をさらって食べるのが上手であまり水槽を汚しませんし、渓流魚ほど水質にうるさくありません。

nawabariayu.jpg (13267 バイト) ayu6.JPG (16376 バイト)

縄張りアユ。黄色斑が鮮やか

結構愛敬がある・・・

7.どれくらい生きるの?

年魚といわれるだけあって秋〜晩秋には死んでしまいます。ちょうどカブトムシを飼うような感覚ですかね。
ただ、アユの寿命は生殖腺の発育に関係していることが分かっており、部屋の照明と水温を上手く調節して生殖腺が成熟しないようにすれば越年させること可能なようです。

8.病気は?

ビブリオ病、くちぐされ病、水カビ病、グルギア症、ボケ病、ちょうちん病、そして琵琶湖産種苗に多発する冷水病など、
「魚病のデパート」といわれるほど鮎は多くの病気にかかります。皮膚に潰瘍が出来たり、餌の食いが悪かったりしたら
隔離して0.5〜1%の食塩水で薬浴します。但し、回復する可能性はあまり高くありません。魚病薬としてはサルファ剤やオキソリン酸などのキノロン系抗生物質がありますが、素人は手を出さない方が無難でしょう。魚病はストレスからくるものが少なくありません。普段からストレスをできるだけ与えないようにしましょう。

9.食べれるの?

以前このページのURLが某巨大掲示板に張られた時に話題になっていた話です。水槽で飼っている鑑賞魚が食えるのか?答えは食えるけどあまり美味くない。といったところでしょうか?水槽の魚は自然とは比べ物にならないくらいのストレスを受けています。人間がそんな環境に置かれたらどうなるか?健康に良いはずがないですよね。やはり食べるのは天然物、百歩譲って水槽よりはのびのびとした環境にいる養殖物といったところでしょうか?

 

〜観察してみよう〜

日本産淡水魚の代表格と言ってよいアユですが、実は他の川魚にはない特性をいろいろ持っています。
水槽飼育でそれが全て再現されるわけではありませんが、見ていると結構興味深いですよ。

アユは熱帯魚?
サケ目に属し、「清流の魚」のイメージが強いことから冷水性の魚と思われがちです。しかし、私が飼った限りでは意外と高水温まで耐えること(〜27℃くらい)、越年させるためには蛍光灯やヒーターが必要なことから、むしろ熱帯魚に近いケアが必要という印象を持ちました。実際、渓流魚を飼うような温度(20℃以下)で飼育すると冷水病にかかる確率が上がってしまうようです。

縄張り:
特有の習性として最もよく知られているのは「なわばり」です。餌となる珪藻類がついた石の周りを縄張りとし、他の個体が侵入すると追い払うのです。水槽飼育においてもアユは縄張りを作ることが多いようです。私が数匹飼ったときは一番大きい個体が縄張りの主となりました(主は体色の黄斑が強くでます)。普段はそれほど喧嘩しませんが、餌をやるときは他の個体を追っ払って独占していました。
他の個体は、最初餌をとれないのではと心配しましたが、したたかなものでいつのまにか縄張りアユの攻撃をかわして餌をとる技術を学習してました。

動きの速さ:
アユはとにかく動きが速い。実はアユの遊泳力は他の魚類と比較しても群を抜いています。流れを作っているにも関わらず水槽の中を縦横無尽に泳ぎまわるアユの姿は見てると目が回りそうです。これだけ動きが速いと水槽の壁にぶつかってしまいそうですが、器用に身体をくねらせて方向転換しています。

Ayudouga.jpg (9669 バイト)
水槽中を泳ぐアユの動画(1.6MB)

好奇心:
アユという魚特有のものかは分かりませんが、意外と好奇心は強いようです。私の飼った個体は水温計と上面式フィルターの取水口に異常なまでの興味を示し、しょちゅうかじりついたり体当たりをくらわして外してました。


参考文献

1)川魚入門 採集と飼育 マリン企画

2)野生魚を飼う 大塚高雄ほか 朔風社

3)アユ その生態と釣り 石田力三 つり人社

4)淡水魚養殖相談 石田力三ほか 農山漁村文化協会

 

戻る

inserted by FC2 system